研修中や駆け出しの頃にいろいろ勉強する中で、古くからの篤農家といわれるような人たちの多くが、「作物栽培で大切なのは土の中の水を腐らせないこと」というような意味合いのことを言っておられる記述によく出会った。はっきり何と書いてあったかの記憶はあいまい。だが、慣行農法や有機農法の区別はなかったかと思う。ただ有機肥料は腐れやすいので扱いが難しいとはあった。 ようするに使う資材なんてのはほとんど関係ない。土の中の水が腐らないような水通りの良い状況を作り、土の中の水が腐らない程度の肥料を与えて栽培する。そうすれば病気にならず収量も歩留まりも上がり、味も良くなるということなのだろう。 だから自然栽培だからといって美味しいとは限らない。肥料はやらないものの耕種的に土の中を腐らせる管理をしていたら意味がない。逆に農薬も肥料も使っていたって、水通りの良い健全な土を作ることができていればむしろそちらの方がいい農産物ができているかもしれない。我々自然栽培農家はこういうことを肝に銘じてやっている(はず)。 土の中の水を腐らせないためには、常に土中の水が動いている状態を作ってやればいい。基本は縦方向、難しい時は横方向。水が動けば空気も運ばれ、水が腐ることはない。つまり「滞る」からダメなのだ。
私が新規圃場の土が腐っていると先日から書いているのは、水が腐る、つまり水が滞る管理をしているからだ。だから収穫から種蒔きまでの空いた期間が重要。作物がある間はどうにもならない。作物のない間にいかに水を滞らせないような管理をするかが勝負。特にうちのように大型機械を多く使う場合は常にこのことが頭にある。このことばかり考えていてストレスを抱えるほどだ。
なのにこの時期周囲を見回すと気になる管理はとても多い。私らは土が腐っていれば作物を育てることができないのに、多くの農業者は土を腐らせていても肥料を与えることでとりあえず作物を育てることができる。しかしながら腐った水を吸って育った作物。肥料の威力と怖さをつくづく思う。
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