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土木の頃(2)

  • 執筆者の写真: 反田孝之
    反田孝之
  • 5月7日
  • 読了時間: 2分

更新日:5月8日

なめられないようにするためには、他にいろいろな工夫はするとしても、まずは仕事ができるところを見せなければならない。作業は実に多岐に渡ってやった。土方もするし、運転手もするし、重機にも乗る。土方は学生時代の造園のバイトでしこたま鍛えられたのでお手のもの。ただ重機(バックホウ)などは経験がなかったから、毎日仕事が終わってから隠れて練習をした。


そんな中で一番担うことが多かったのが測量だ。そして丁張をかける。従事した3年の間に、もうどれだけの杭を打ち、どれだけの丁張をかけたかわからない。丁張については分かりやすいこんなサイト(→ )があった。丁張にはしょせん決まった形というのはなく、要は作業をする人が分かりさえすればよい。それで主に省力化について自分なりに工夫できる余地が大きく、理系脳の私には大変おもしろかった。


そして測量屋にとってかなり大事なことがある。それは作業を出来る限り中断させないようにすることだ。ここは愚直に頑張った。測量し丁張をかけている間は作業がストップしてしまうから、それをできれば昼休みの間とか、仕事が終わった夕方とか、休日にやるのだ。自社の場合は利益を考えて当たり前だが、他社(下請け)相手でも信頼を得るためには必要なこと。


これをスムーズにやっているとだんだん相手の態度が変わってくる。無理難題風に、いついつまでに丁張りをかけろと、初めはヤサな私を困らせてやろうという魂胆が見え見えだ。しかもそれは何十メートルもの切土の法面の丁張だったりもして、何度も山の斜面や崖を行き来しなければならないような場面もある。それでも私が予想外に早くやってしまうものだから、こうなると間違いなく相手の態度が変わってくる。そのうち「あんた早いなー」と穏やかな顔で声をかけられるようになり、間違いをしたときでも大目に見てくれるまでになったりした。


ちなみに丁張というのはミリ単位の精度を必要とする。丁張板のもともとの反り具合も確認したりして、気持ちとしては1ミリの誤差も許容しない。初めは「アバウトのタカ」などというあだ名をつけられてからかわれた私だったが、この丁張の設置作業によって、細かさとの付き合い方を学ぶことになった。


続く。

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