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岩崎さんのこと

  • 執筆者の写真: 反田孝之
    反田孝之
  • 2025年12月18日
  • 読了時間: 2分

前回触れた葬儀について。地元農家の大先輩がなくなられたのだ。91歳。「鉄人岩崎」と誰となく呼び、つい数年前まで体力は私の倍はあるだろうというような方だった。とりわけゴボウ栽培では一日の長があった。現在うちの経営の柱の一つである秋播きのトンネル栽培は、30年くらい前に岩崎さんをはじめとする関係者が確立された作型なのである。


事情の詳細は当時の町の広報誌であるこの写真を読んでもらいたい。







このあと試行錯誤を重ねられ、当地に合った播種やビニールをかけるタイミングやビニールを外すタイミングなど、農薬の使用が前提ではあったけれど、それらのすべてを数年でほぼ確立された。写真の視察の10年後にうちが今の農業とゴボウ栽培を始めたときにはそれらの点では何も悩むことなく、大変ありがたかった。


私が唯一頭を抱えたのは、抑草の処理剤を使わないがための草取りの方法だ。それでトンネルサイズのアレンジを考えた。その導入に支柱やビニール代の初期投資がバカにならないことから、岩崎さんからも「悪いことは言わんから皆と同じサイズがいい。いろいろ考えて今のサイズに落ち着いたんだから。」というアドバイスをいただくも、処理剤を使わないのでここだけは譲れない。そして私も数年をかけて新たな型のトンネルの設置体系を確立させることができた。


岩崎さんとの農業談義は、農薬使用の前提の違いもあって、技術面に触れることはお互いになかった。が何よりためになったのは精神論である。特別なネタを何か話したわけではなく、話の節々に自分を律する何かをつかみ取ることができた。そして3年くらい前だったか、ある時岩崎さんに「あんたは根性の塊のような男だ、たいしたもんだ」といわれたことがあった。根性の塊の権化とも思える鉄人からのあまりにも意表を突かれた一言に驚き、何とも嬉しく思ったものだ。今でもこの言葉は最高の誉め言葉だと胸に刻んでいる。


葬儀が終わって、高齢の奥さんに声をかけた。「(トレードマークの)赤いタオルを巻かれたんですね。」と。するとにっこりしながら「かっこえかろう」と一言。これが岩崎さんのすべてを物語っている。こういうところは絶対に敵わない。不思議とさわやかな気持ちで葬儀場を後にした。

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