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洪水や築堤への私のスタンス

  • 執筆者の写真: 反田孝之
    反田孝之
  • 2020年7月27日
  • 読了時間: 3分

更新日:2020年8月4日

このたびの洪水でも、私の洪水や堤防に対する考えが誤解されているなあ、と感じることが多かった。それで実際にあったやり取りを含めて、改めてQ&A形式で説明しておきたい。


Q:時々洪水が来たら土が堆積して作物が良く育つようになるから、時には洪水になって欲しいと言われてましたよね。


A:そんなことは一言も言ったことはありません。洪水が土を運んでくるのは、このたびのような大規模の洪水の時のみで、たびたびある中規模の洪水では土はほとんど運ばれてきません。しかも土が運ばれてくる畑は限定されていて、中には逆に畑の命である表土が削られてしまうところもあります。運ばれてきた土を土壌分析すると、確かにたっぷりと堆積したような場合には硝酸態窒素が多く含まれていますが、いわゆるその他の微量要素は限定的です。わずかしか堆積しなかった場合の土は、硝酸態窒素もほとんど含まれません。

 一方で洪水による作物への打撃、経営への打撃は多大です。できれば洪水には2度と来てほしくないです。

 ただ、太古からの洪水によって田津地区の深い土が形成されてゴボウ栽培を可能にしているわけですから、洪水自体を否定はしません。仕方がないと受け入れるのみです。


Q:早く堤防ができればいいですね。


A:田津地区での堤防建設には反対です。なぜなら計画のような堤防ができると、ゴボウが育つ畑のほとんどが堤防の下敷きになってゴボウが栽培できなくなり、うちは田津地区から撤退をしなければならなくなるからです。そして古くから「川越ゴボウ」「桜江ゴボウ」と親しまれてきたゴボウの歴史も実質終わってしまいます。そして田津集落は堤防ができたところで、近い将来ほとんど住んでいる人がいなくなることが予想されていますので、広大な面積の農地を潰すことで経済価値すら乏しい土地に成り下がってしまいます。


Q:堤防に反対というのは、単にハード的手法には反対ということではないのですね。


A:当たり前です。堤防のおかげで救われている人も多いのですから。川越地区の未完成の堤防は一刻も早く作ってもらいたいです。


Q:田津地区で浸水被害に遭われている人たちの対策はどうすればいいですか。


A:堤防を山側に作れば、農地は潰れません。


Q:洪水になって困るなら、他の土地へ移動すればいいのではないですか。


A:6haもの広さの優良農地がそう簡単に近くにあるのなら、あなた、ぜひ私に紹介してください。万に一つあったとしても、ゴボウはおかげさまで日本一美味いと散々持ち上げられています。農地を変えればゴボウ栽培が難しいだけでなく、こんな評価のものは育たないでしょう。

 また農地とはずっと世話をしてきた我が子のようなものだ、というセンチメンタリズムについては敢えてここで触れるつもりはありません。


Q:何か月もかかって育ててきた大量の野菜が一日でダメになってしまった無念さというものが、自分たちには想像できません。


A:実はそういう無念さはほとんどないんです。これまで労力をかけてきたというのは、私がただ生きてきたということに過ぎないのです。それよりも単純に売り上げが減った、経費がペイできない、などという銭勘定が痛いのです。


Q:それでも堤防がいらないと言われるのは、やっぱり凄いことだと思います。


A:いや、だから、何度も言うけど、堤防ができたらゴボウが作れなくなる、この美味いゴボウがなくなるんだって言ってんじゃん。凄いことでも何でもないですよ。


Q:終始ドライで、あまり共感できるようなネタはありませんね。


A:そうでしょ。偶像化されても困るんですよね。洪水のない年にしっかり儲ける。この田津の農地を活かすために我々にできることは、実はそれしかありません。

(田津地区の今)

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