香西さんから教わったこと
- 反田孝之
- 4月14日
- 読了時間: 3分
前回、香西さんから教わったことについて『補助金目当で方針を決めてはならない、単価の低い作物を選べ、農産加工に手を出すな、怖いのは「くたびれ」』と書いた。これについて参考になる人もいるかもしれないのでザックリ触れておきたい。
補助金目当てはいけないというのは話が分かりやすく、言われてみればまあそうだろうなと思う人が多いことだろう。しかし気が付くとそれに流される人は少なくないはず。補助金は麻薬だし、補助金というものは経営を誘導するために設けられるものが多いからだ。だから頭では分かるというレベルではなく、体に沁みこませないとならない。補助金をもらうなということではない。自分の進もうとする延長に補助金があるのなら大いに活用するべきである。
単価の低い作物を選ぶというのは状況によるだろう。単価の高い作物は手間がかかるので雇用環境に恵まれているところではいいのではないか。しかし雇用環境はどうであれ農業開始初期は低い作物の方が機械化ができるしオペレーションが楽なので有利だろう。
農産加工については軌道に乗った後ならいいのではないか。しかし初期はいけない。作物生産を柱に農業を始めたのなら経営を軌道に乗せるためにもっとも楽な近道は、収量と歩留まりを上げることだからだ。農産加工は得てして利益が少ない。そこに割く時間があるならそれを増収と歩留まりの改善に当てるべきだ。ただし経営が軌道に乗った後ならいろいろな理由で、例えば労務の平準化を図るためやC品の有効利用のためにやるのもありだ。うちも今は少しやっている。
「くたびれ」については「敵はくたびれ」と何度もここで書いてきたが改めて。単に体がくたびれないように働けという意味ではなく、生活水準も含めたトータルなものだと考えてもらいたい。つまり簡単にいうと、今している苦労に比べて生活水準がどうなのかということ。これが悪ければくたびれるし、逆に良ければ少々の苦労をしてもくたびれるものではない。若いうちや農業開始しばらくのうちは、たとえ生活が苦しくても少々の苦労すら気にならないもの。しかしそれがいつまで続くか。自分というものを知らねばならぬし、家族のことも知らねばならない。そして要するに金を稼がねばならない。
くたびれに関連して、専業か、兼業かということもある。自分自身や夫婦単位で、専業で自信がないから兼業でと考える人もいる。しかしここには落とし穴がある。兼業が上手く行くのは兼業の部分がそれなりの収入になる場合だけだ。例えば男が農業をして女が勤めるという場合、勤め先がパートやアルバイト程度では決して楽になることはない。そのうちくたびれる。それなら腹をくくって夫婦で一緒に農業をした方がいいかもしれない。
以上、ごくごく簡単に書いた。こういうことでよかったか、香西さん。失敗した人や苦労した人を巡る旅では、まさにこういう人たちが多かった。特にくたびれについては、独立就農で15年やったけど、くたびれたから農業法人に勤めることにした、という人もいたのが強く印象に残る。
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