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稲作後半の水管理

執筆者の写真: 反田孝之反田孝之

昨日の稲のネタついでに。農薬を必要としない稲の育て方については、水管理の方法もよく聞かれる。これもに農業者によって千差万別だからだろう。


田植えから1か月くらいの間については、苗の生育に合わせて水位を上げていき5~8cmを死守する、ということは、今時かなり広く周知されているようである。しかし中干後というか、生育後半についてはあまりこれという方法がない。


私が思うには、その時の根をできるだけ長く生かせる方法をとるというのが一番いい。生育中期の根が水に強い水根であるなら湛水管理で、乾燥に強い畑根であるなら節水管理で、収穫10日前まで通すということにつきる。多くの場合は中干をするから、この場合はだいたい中干後の根の状態で決めることになって、強く干して根が畑根に生え変わって入れば節水もしくは水を入れない、あまり干さずに水根が元気なままなら稲刈り前まで湛水や飽水で通す。


あとは湛水の仕方、節水の仕方。湛水だってかけ流しや押水管理もある。節水だって飽水やその加減がある。そこは田んぼの条件を見て考える。


よく耳にする、「水を遅くまで入れておかないと籾が充実しない」とか「水を入れなければ根が深く伸びる」というのは、部分的には事実であっても、再現性が微妙で明らかに本質的ではないと思う。


上記、もうちょっと正確に言うと、中干の時期による中干の程度を、まずはよくよく考えるべきだ。それによって中干で根が弱ってすでに水管理が虚しい場合もある。多分意外と多い。


関連でもう一つ言うと、「稲刈り後にひこばえが旺盛に生えてくる田は肥料分が残っている」というのも経験的にはウソじゃないかと思う。ひこばえが旺盛なのは根が元気だからという場合も明らかにある。


どんな田んぼにでもどんな管理にでも有効で、私が一番いいと思うのが、溝切機を使って中干時に深さ10cmくらいの溝を何条か沖に切る(排水口につなげる)、そして溝底に少し水が溜まっているような状態を稲刈りまで維持するという方法である。これを基本に田んぼの状況・条件次第で水を落としたり走らせたりする。これが出来れば鬼に金棒。こんな場合にはきっと地中を貫くようなタテ根が張っている。稲刈り後もすぐに田んぼが乾くという特典付き。


でもこの溝切りがかなり大変なのだ。労力的にもきついし、時間もかかるし、挙句上手く切るのが意外と難しい。15年も前は「信念でやる」と言い聞かせて1.5haの田んぼでやっていたものだが、今はとても無理。溝切機もすっかりお蔵入りしまった。

(2008年8月。畔際に溝が見える。16条置きに田んぼ全体に同様の溝を切っている。)


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