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腐敗実験から見る対立の虚しさ

  • 執筆者の写真: 反田孝之
    反田孝之
  • 7月30日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月9日

事情があってこんなことを書く。


世間ではあまり知られていないが、農業界では慣行栽培と有機栽培の対立が激しい。SNS上ではもはや殴り合いの喧嘩だ。有機側は農薬と化学肥料は環境や人体に悪いからけしからんと言うし、慣行側はいやいやそんなエビデンスはない、無駄に消費者に不安を煽ってネガキャンをするなと。


私も自然栽培を実践する立場としては、確かに有機側が慣行側へ向ける批判には辟易することがある。「農薬や化学肥料を使わないから安心・安全です」のような。本人は批判しているつもりはなくても、「農薬や化学肥料を使うのは安心・安全ではない」と言っているのと同じことだ。しかも最近では行政までも平気で同様のことを言う。エビデンスがないのだからこれはあまりに虚しい批判である。私が常日頃から言うように、問題は「使う量」。何度でも書くが、有機でも慣行でもどっちでも良い、使う肥料や農薬の量が問題なのであって、双方の対立はあまりにも不毛である。


このことを分かりやすく示してくれるのが腐敗実験だ。腐敗実験とは、バカな人間が頭で良し悪しを考えたところで人によって考え方は違うんだから、だったらこの世の支配者である菌に聞いてみよう、というものだ。実験をしてみると、一般的にも私の経験的にも、使う肥料・農薬が少ないほど腐敗しにくい傾向がある。他方で人類の数百万年における歩みとはついこの数十年前まで、腐敗しにくいものしか口には入らないという自然界(菌)のセーフティーネットに守られてきた歴史だ。であるならば、やはり人間はこの数十年に反省を致し、肥料・農薬の使用量の少ないものを食していくべきだろう。


もちろん使用料はゼロ、つまり自然栽培が一番良い。しかし自然栽培の実践は圃場や生産者の力量を選ぶのでなかなか難しいし、食糧安全保障の観点からも自然栽培ばかりを推奨するわけにはいかない。だからどうしても肥料・農薬は必要なのだ。しかし多くを使ってはダメですよ、ということをこの実験は示してくれる。もっとも肥料や農薬を多投することが環境にも健康にも良くないということは、すでにずいぶん前から世間に広く認知されている。なにも今さら実験に頼ることではない。


しかし他にもこの実験から得られる、多くの人に知って欲しい現実がある。それは使う肥料が化学肥料であろうと有機肥料であろうと、使う量が多ければどちらも腐り方が激しく、使う量が少なければどちらも腐りにくいということである。人間は頭で考えて、化学肥料はいけない!とやりがちだが、菌に言わせると、どちらでもいいよと、使用量が少なければいいんだよと。これが我々(あえて我々という)が有機と慣行の対立を虚しく思う理由である。


ちなみに、今は栽培技術が進んでいるので、わずかな肥料を使うだけで及第点の収量を上げることは難しいことではない。頑張れば誰でもできることである。


昨今、国が今さら片手落ちの有機農業を推進し始めたため、社会のあちこちで不思議な軋轢が生まれている。給食の有機化への賛否などはこの典型だろう。あまりにも無駄で虚しい対立だ。もっと多くの人に腐敗実験について知ってもらって、有機か慣行かの選択ではなく、どちらでもいいから低投与栽培を、という視点を持ってもらって、誰もが納得できる実のある活動にしていってもらいたい。


そして当地では今、自然栽培から得られる以上のような視点を普及する最先端の取り組みが行政だけでなく、メディアまで巻き込んでなされている。この沈みゆく小さな地方から世の中に風穴を開けるような動きが生まれることを想像するだけで、あまりに痛快ではないか。そんな夢を見せてくれる関係者の皆さんに感謝しかない。

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